Q1 持続可能な社会をめざすなかで、消費者利益と環境・社会利益をどう調和させていけばいいか(2020年7月28日)

 

A1 消費者志向経営において消費者利益を尊重するのは言うまでもないが、現在、社会の持続可能性が問題になり、消費者志向経営も社会の持続可能性の中で追求されなければなれない。したがって、消費者の安くて品質のよいものがほしいという消費者利益も環境や社会利益を考慮しなければならないことはいうまでもない。

しかし、消費者利益と環境・社会利益はそれぞれ多様な内容を含むことから、その調和の内容は一律には決められない。たとえば、安さを求めることが環境破壊や労働者の人権を侵害につながるとしたらそれは許されない、また安全は基本的には優先させるべき利益と考えられるが、必要以上の安全追求が環境・社会を脅かすとしたら、それは許容されないだろう。さらに、消費者が商品等を選択するための情報提供は環境・社会利益とも両立する。

 

このように持続可能な社会における消費者志向経営の実践における消費者利益と環境・社会利益の調和については、具体的な場面ごとに利益較量をしながら決定することにならざるを得ないが、消費者の行動変容にも影響を与えることから、消費者に対して、十分説明をしていく必要があるのではないか。現在のような、いずれの利益も尊重するという説明では十分ではないだろう。

 

Q2  SDGsの取組を積極的にアピールしたいが、その際に注意することはあるか(2020年7月28日)

A2 現在、企業はSDGsに意欲的に取り組むところが増えており、カラフルなSDGsのアイコンがCSR報告書に掲載されるようになっている。消費者にとっては企業の情報発信は、企業や商品・サービスの選択等に役立てることができるものでもあり、自分の選択によって、企業とともに持続可能な社会を実現することを可能にするものでもある。

 しかし、このようなよき循環が成立するためには、企業の提供する情報が適切でなければならない。現在次のような問題が見受けられる。

 第一に、企業は自社の取組のプラスの側面、たとえば環境にいい商品を提供しているなどの情報提供には熱心である。一方、自社の商品やサプライチェーン上の環境・社会上の課題、たとえば原料を調達する場合の環境負荷や地域のコミュニティにおける問題などについては情報を十分提供していないことが多い。これでは商品等における環境・社会課題がどこにあって、どのような努力をしているのかがわらないことから、結局、消費者は選択ができない。

 第二に、SDGsウオッシュではないかと疑われる情報提供も見られる。SDGsウオッシュとは、SDGsに取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないことをいう。

SDGsのアイコンを従来の事業にマッチングさせただけ、事業の内容に直接関係のない自然の写真などによって環境経営をイメージさせる、製品の製造過程で通常よりも多くのCO2を出すにも関わらず、「天然」などアピールしたい面だけを強調するなどの例がある。

 

 このような実態を伴わないアピールは消費者をご誘導させる不適切な情報発信であるばかりではなく、企業への不信にもつながることになるので避けなければならない。SDGsの取組のみならず、商品等についても消費者等外部に情報発信をする際には、アピールの視点だけではなく、消費者の適切な選択が可能かという消費者視点でのチェックが求められる。