■第4回「消費者と顧客」の違いは何か(3)-消費者の権利ー 2017年5月31日

消費者志向経営というとき、多くの企業がそして消費者が思い浮かべるのは「顧客満足(CS)」ではないだろうか。巷には「お客様満足度No.1」など顧客満足を目指す、あるいは顧客満足を競う企業の姿がある。顧客満足とは、お客様のニーズに応え、自社の商品等のお客様の不満や苦情に的確に対応して、お客様の満足を獲得する取組みであり、最終的に顧客満足の向上によって企業の利益につなげようというものである。

CCFSが提案する消費者志向経営はそれを否定するものではないが、それだけにとどまらない経営を企業に求めるものであり、現在の企業にはそれが必要であるとするものである。日本企業は顧客満足に非常に努力し、消費者に多くの利便性と豊かさに貢献してきたと考えている。しかし、現在の消費者は表示の偽装、製品の安全性、悪質商法などの多様な消費者問題にさらされる一方で、持続可能な社会に参画する消費者としての行動も期待されるなど、複雑な状況のなかにいる。さらには消費者も一様ではなくその行き過ぎた行動が企業や社会に問題を発生させることも起きている。このような消費者の状況を見据えたとき、企業は単なる顧客満足ではない経営を考えるときに来ているのではないか。

 現在、企業と消費者をめぐるさまざまな問題は「顧客満足」の発想では解決ができない。たとえば、「表示の偽装」の問題について、消費者がどのような表示を望んでいるかという考え方で問題は解決できるだろうか。「表示」が消費者にとってどういう意味をもつか、現代における企業と消費者の関係を考えたうえでの企業の取組みを考える必要がある。また「製品の安全」の問題について、消費者がどのような安全を望んでいるかで解決できるだろうか。消費者の望む安全を考えるなら、リスクなど存在しない絶対安全だろう。しかしこの社会には絶対安全など存在しないし、当初安全とされていたものが後日問題になり、商品等のリコールがなされることもある。あるいは消費者の使い方によって問題を発生させることもある。安全問題は企業の不断の努力とともに消費者の意識や行動の問題とも関わり、社会全体で解決を図るような事態もありうる。このような状況で企業は消費者にどう向き合えばいいのかを考える必要がある。

 

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