2017年5月8日
“送料無料“の表示は、負担しているはずの費用を見えにくくする?
―送料の見える化で消費者の意識変革のきっかけにー
文責:古谷由紀子
宅配便の再配達が社会問題に
いま、宅配便の再配達が揺れている。再配達がドライバーの労働負担を招き、CO2の排出量の増加などの環境悪化をもたらすという。宅配便の再配達の防止に向けて環境省や国交省、さらには事業者による取組みが急ピッチで進んでいる。この問題が連日のニュースで取り上げられるようになり、多くの消費者も問題を知るようになってきている。サステナビリティ消費者会議でも消費者の行動のヒントとなる「消費者市民チェックリスト<宅配便編>」を提供し、さらには「サステナブル消費論」の講座で取り上げている。
本稿では、消費者の認識への変化として、“送料無料”の表現について考えてみる。
送料無料の表示への疑問提起
日本物流団体連合会理事・事務局長の村上敏夫氏は日経エコロジー(5月8日発行号)のなかで、「再配達の問題」は、事業者が『送料無料』をうたってきたことが影響している」とし、「“送料込み”の記載にしてほしい」という。どういうことなのか。
それを聞いたとき、”送料無料“も”送料込み“も同じことではないかと思った。その後周りの何人かに聞いてみても同様の反応であった。しかし、説明を聞くと誰もが「なるほど」と思ったのである。
何が問題なのか
実は、”送料無料”と”送料込み”の表現には大きな差があり、そこに消費者の意識・行動の変化を促す鍵があるように思える。
”送料無料”は「送料については請求しません」ということだ。つまり、実際には商品の輸送は行われ、ガソリン代も人件費もかかっているが、送料は事業者が負担するということだ。
消費者にとって、商品の価格は購入にあたっての判断材料として重要である。しかし、その価格の内訳がどのようになっているのかについてはほとんど関心を持っていない。そこで無料という表現をすると、消費者は商品の送付には費用がかかっているという認識を持つことができず、それが、宅配便の再配達の問題にも影響し、安易な利用につながってしまうというわけだ。
”送料込み”として送料を見える化することで消費者の意識改革のきっかけに
以上から、消費者に商品送付には費用がかかることを認識してもらうには、消費者に送料を見える化する、つまり“送料込み”とする必要があることになる。
以上